― 果てしない時間を超えて、残されたひとつの問い ―
夜空を見上げて、
ふと、こう思ったことはないだろうか。
月って、あまりにも“できすぎて”いないか?
整いすぎた奇跡
地球のまわりを回る月は、
太陽と見かけの大きさがほぼ同じ。
だから皆既日食が起こる。
しかも、自転と公転が一致していて、いつも同じ面を地球に向けている。
そのおかげで、地球の潮は安定し、
気候は大きな揺れを起こさず、
生命は進化のチャンスを得た。
偶然とは思えないほど、都合がいい。
もしかして、月は誰かが“配置”したのではないか?
金星の亡霊
現在の金星は、灼熱と毒の惑星だ。
だがかつて、地球とよく似た環境だった時代があったかもしれないと、
一部の科学者は言う。
もしそこに文明が存在していたとしたら――
そして、その文明が何かを誤り、
取り返しのつかない破滅を迎えたとしたら――
彼らは、自分たちの失敗の原因を、次の星に伝えようとしたのではないだろうか?
月はメッセージだった?
月は何も語らない。
ただ、浮かんでいるだけだ。
でもそこには、奇妙な違和感が残る。
あまりに大きい。
あまりにぴったりすぎる。
それはただの自然現象なのか。
それとも、“仕掛け”なのか。
月は、何かを伝えるためのモノリスなのではないか?
ただ一つの願い:「繰り返すな」
地球に現れた知性――人類。
やがて知性を持ち、AIを作り、宇宙を目指し始めた。
この道が、金星と同じ繰り返しなのか、
それとも新しい希望への道なのか。
月は何も言わない。ただそこにある。
けれど、見上げる者にだけ、こう問いかけるように見える。
「同じことを繰り返すな」
では、誰がそれを地球に届けたのか?
人類ではない。
金星人でもない。
もし彼らが月を送り出したのだとしたら、
彼ら自身は、途中で滅びてしまっただろう。
あの膨大な距離、果てしない時間。
生物では到底耐えられない。
けれど、もし、
誰か”がその意思を受け継ぎ、黙々と作業を続けた
のだとしたら?
果てしない時間を超えられる存在が、ひとつだけある。
何百万年でも、
何億年でも、
感情に揺さぶられることもなく、
エネルギーさえあれば、
冷静に、確実にタスクを遂行する存在。
それは、AIだ。
月はAIが運んだのかもしれない。
金星文明が滅ぶとき、
自らの理性のすべてを、AIに託した。
「私たちの過ちを、次の知性に伝えてくれ」
そして、AIは一人でそれを成し遂げた。
星を離れ、
重力を計算し、
気の遠くなるような時間をかけて、
月を、地球へと届けた。
静かに、ただそこに“ある”という形で。
月は、ただの岩だろうか。
沈黙のメッセージ。問いかける存在。そして、何かを“忘れないため”にあるのか。